卵の質が改善すると注目されているサプリメントとしてメトホルミンがあります。
古くからインスリン抵抗性を改善することによりインスリンの血中濃度を低下させることや、AMPKを介して癌を抑制していることが知られており、糖代謝改善治療薬として糖尿病患者への利用が行われています。
不妊治療の現場では、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の方でインスリン抵抗性を持ちクロミフェンが効かない場合にメトホルミンを併用することが有用だと考えられています。
不妊女性の5~10%がPCOSと言われておりその特徴として
- FSH値が正常であるがLH値が高い
- 男性ホルモン(テストステロン)値が高い
ということが挙げられます
PCOSの場合PCOSではない患者に比べ、妊孕性の低下や流産率が高くなるといわれています。
2015年に発表された論文では、マウスをモデルにしメトホルミンの実験を行っており、 メトホルミン21日間投与すると体重と体脂肪率が低下し、男性ホルモンの値も減少したそうです。
さらに、採卵できる卵子の数に改善は見られなかったものの、受精率と胚盤胞到達率については、正常モデルと同等レベルまで改善が見られます。
これは、過度のアンドロゲンをメトホルミンが抑えることによって、アンドロゲンによる卵子の質の低下を抑える働きがあると考えられています。
この効果はヒトでも有効だと考えられており、PCOの方に処方されています。 胚盤胞到達率が上がると、移植あたりの妊娠率も高くなるので期待できますね。
アメリカでは、5年前から長寿薬としても注目を集めているメトホルミンですが、日本では発がんのリスクが否定できないという見解があり慎重に取り扱われているのが現状です。
とはいえ、日本でも治療薬として一般的に扱われていますので、医師の指導をきちんと守って内服すれば大きな問題はないかと思います。
また、同じ効果が得られる薬としてピオグリタゾンがありますが、この薬と卵質については解明できていないのが現状です。
病院でよく処方されるL-カルニチンや漢方薬である八味地黄丸にも胚の質をよくする効果があり、こちらはPCOSでない方も処方してもらえます。
卵子の成長は原子卵胞から成熟した卵子になるまでだいたい80日かかると言われているので、効果を得るには3か月以上飲み続けることが大事です。