ARTによる年別出生時数
2017年のART(生殖補助医療)による出生時数は5万6千人を超えました。この年の日本の出生時数は94万6千人ですので、約17人に1人がARTによって誕生しています。
かつては「試験管ベイビー」として大きく取り上げられた体外受精も、今日ではクラスに1~2人いるという身近なものになってきました。
不妊治療を始める際に
という疑問は多くの方が抱くと思います。そこで今回は、日本産科婦人科学会が出している日本における年齢別妊娠率について考えていきましょう。
~はじめに~
今回取り上げるのは2017年のデータです。
体外受精を実施した場合、実施施設は日本産科婦人科学会に採卵~胚移植~出産までの経過を1症例ごとに報告することが義務づけられています。
日本産科婦人科学会のHPには過去10年分のデータがありますので、気になる方はこちらをご覧ください→HP
また、ここでいう「ART」とは一般体外受精や顕微授精を行い、胚移植をした方の事を意味しています。人工授精やタイミング療法は含まれませんのでご了承ください。
~年齢別妊娠率~
すでに凍結胚をお持ちの方など、胚移植ができる条件がある場合の妊娠率は以下のようになっています。
年齢 | 妊娠率 |
25歳 | 45.5% |
30歳 | 44.3% |
35歳 | 40.0% |
40歳 | 27.2% |
43歳 | 14.7% |
45歳 | 6.3% |
50歳以上 | 2.0% |
40歳を超えると急速に妊娠率が下がることが顕著ですね。
赤い線は総治療あたりの妊娠率です。
赤い線が青い線よりも下にあるのは、1回の採卵で卵が受精しきちんと成長して胚移植が必ずできるとは限らないからです。まだ治療を始めていない方は赤線を参考にしてください。
年齢 | 妊娠率 |
25歳 | 27.0% |
30歳 | 27.9% |
35歳 | 25.2% |
40歳 | 15.2% |
43歳 | 6.8% |
45歳 | 3.1% |
50歳以上 | 0.7% |
また、流産率は年齢が高くなるにつれて高くなります
これは、年齢が高くなるにつれて染色体の分離がうまくいかなくなることがおおくなり、結果として染色体異常の卵子が増えしまうことが原因です。
染色体異常の胚でも着床することは多く、年齢問わず妊娠初期の流産の多くは染色体異常によるものです。
決してお母さんのせいではないので覚えておいてください。
次に1移植あたりの妊娠率についてです。
移植ステージ別・年齢別の移植あたり妊娠率
胚盤胞期胚を移植した場合、31歳以下であれば1回の胚移植で50%以上の妊娠率とは希望が持てますね。
40歳の方でも、凍結融解胚移植による胚盤胞移植だと33%という数値になります。
きれいな胚盤胞に育ってくれたのであれば、期待できると思います。
このグラフからは、年齢別の妊娠率以外にも
・分割期胚よりも胚盤胞を移植したほうが妊娠率が高い事
・年齢が高くなるにつれて、分割期胚と胚盤胞の妊娠率の差が小さくなる
ことがわかります。
胚凍結の際にどちらを選択するか悩まれる方も多いと思いますので、こちらの記事も参考にしてください↓
最後に
この記事を見て年齢的にあきらめようと考える方もいると思います。
この年に胚移植をして出産された方の最高年齢は52歳の方です。
2017年確認できているだけでも、40歳以上で胚移植を行い2597名の出生児が確認されています。
このデータは、不妊原因や胚の凍結時の年齢など様々な要因が含まれていますので、まずは医師と相談し、十分な検査をして不妊原因特定することが大切です。
卵の成長や着床は、年間1000症例の結果を見ていてますが未だにわからない部分はおおいです。
1度チャレンジしてみるのも大切だと感じます。